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2009-05-04

よくわかる (かもしれない) 建築環境工学

19:52 | よくわかる (かもしれない) 建築環境工学 - y4su0の日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - よくわかる (かもしれない) 建築環境工学 - y4su0の日記 よくわかる (かもしれない) 建築環境工学 - y4su0の日記 のブックマークコメント

ということで、よくわかる (かもしれない) 建築環境工学

前にも書いたように、建築環境工学の対象は大まかには、熱環境、空気環境、音環境、光環境ぐらいに分かれており、かなりバラエティに富んでいます。ということで、細かく書くときりがないのでかなりざっくりとした書き方で。

ひょっとしたらスコーンとどっか抜けてしまってるかもしれません。もし抜けてたらその分野の研究者の方ごめんなさい。

熱環境

熱環境の対象は読んで字の如しで、建築の内外における熱の移動と人体の温熱感。

さらに「熱の移動」については、機械的な手段 (要するに空調設備) を用いるのか、用いないのか、といったあたりで分かれます。前者の立場をさらに進めると、エネルギーやコストなど与えられた制約条件の下で要求される熱環境を実現するための空調設備設計 (または運用) の最適化という話になります。また、後者の立場をさらに進めると、壁体内の非定常熱伝導や建物開口部における放射熱伝達による室温変動のシミュレーションみたいな話になります。エネルギーやコストの効率を考えると当然両者を併用しないといけないので、これらの立場は対立するものではありません。

人体の温熱感については、被験者を使った生理実験*1やったり、人体内外の熱収支をモデル化したシミュレーションを行ったり、という研究をやっています。かなり生理学チックですが、このあたりからISO7730「中等度温熱環境-PMVとPPD指標の算出と快適温熱環境の仕様」などの成果も出ています。

空気環境

空気環境の対象は空気の「質」です。具体的には、室内空気の水蒸気、二酸化炭素、その他有毒ガス (窒素酸化物、一酸化炭素など)、粉塵類などの濃度のコントロールが問題になります。で、流体力学的に室内空気の流動をきちんと考えたり、ということになります。

また、特に水蒸気については、熱の移動も同時に考慮しないと、いろんなところで結露して壁材料にダメージを与えたり、部屋の隅っこでカビが生えたり、ということになります。さらに地域によっては、壁体内部で水分が凍結して深刻な問題になったりします。ということで、熱環境分野と空気環境分野の研究は比較的重なっていることが多いです。

音環境

音環境の対象は、室内音響とか騒音対策あたり。

室内音響の花形はなんといっても音楽ホールの音響設計なんですが、その影では各種建築材料の音響的な特性とか、「(心理的に) よい音楽ホール」の物理的な条件の解明とか、地道な研究が続いています。

騒音分野は、道路騒音や航空機騒音など外部からの騒音に対する実態把握、予測、対策などに関する研究です。最近だと、GISとかアクティブ・ノイズ・コントロールとか、建築以外の技術を使ってどうのこうの、みたいな研究がちょこちょこ出ています。

他にも、床への衝撃や各種機械からの振動が床や壁体を伝わる、固体騒音というのも建築における音環境の問題になるんですが、この辺の分野はひょっとしたら id:tsugo-tsugo さんのエリアと重なるかもしれません。

傍目で見ていると、電気音響など他分野との交流が結構盛んな感じがします。

光環境

光環境の対象は照明と色彩あたり。

照明関連は、各種作業のための光環境の設計手法の検討とか、光環境に対する心理評価とか、昼光(=直射日光+天空光)の照明への活用などをやります。心理評価関連の研究は限りなく認知心理学に近くなって、どこが建築学やねん、という状態になることもあったりします。ここ数年は光によるメラトニン抑制がヒトの概日リズムに与える影響というのが結構ホットな話題で、某社が製品化に向けて色々研究しているようです。

色彩関連だと、各種色彩環境に対する心理評価などの研究があるんですが、景観評価など一部のテーマでは、同じ建築学の中の計画系と重なります。しかし、日本建築学会大会のタイムテーブル見てると、計画系の都市景観セッションと環境系の色彩環境のセッションが同時進行になってる (=環境系の研究者が計画系のセッションを聴くことができない) ことが多くて困り者。

その他

給排水&水環境、各種電子機器の動作への影響などを考慮した電磁環境、温熱・音・光環境の組み合わせ環境を扱う複合環境あたりも建築環境工学の守備範囲内ですが、研究者の数はそれほど多くありません。

また、個別の建物だけではなく、都市レベルでの環境を問題にすることがあります。熱環境分野におけるヒートアイランド問題やその対策なんかはその典型。

最後に

以上が建築環境工学でやってる内容ですが、当然、建築系専攻があるすべての大学ですべてのテーマを研究している*2というわけではなく、それぞれの大学によって、「照明関連の研究はやってるけど、色彩関連はまったくやっていない」みたいなことがあります。

また、各分野と研究室の対応については、大学の規模などにより、「熱・空気環境、音環境、光環境がそれぞれ別の研究室」、「熱・空気環境、音・光環境の2つの研究室」、「建築環境工学全体で一つの研究室」などのパターンがあります。

大学における研究室選択などの際にはそのあたりの情報も抑えておきましょう。

*1:医師じゃないので採血はできない。ということで、体温、脈拍、血圧などが実験データになる

*2:学部や大学院の講義では一通りやるけどね